自分の表現したいものが、はっきりしたのは丁度30歳だった。
父親が亡くなり、その年に子供が生まれた。
子供の貪欲に生きるエネルギーのほとばしり、その生命を生み出した母親の存在感、生命力を表現したくて赤とか黄色などの原色を使った。
母子像・子供の姿を描き始め、娘の成長と共に作品が、ただひたすら生命の輝きへの表現を追い求め、変化していった。
家族が増え、人と人の繋がり、人と自然へのかかわりを考えるようになって、絵のテーマも生活の周辺へと広がってきた。
山形の地に引っ越してきてから、眼に映る自然の豊かさを体験し、植物や風景などの中心の表現も楽しくなってきた。
母親が認知症になり、施設に入った。
母の表情から感じた心象風景を描こうと思った。

春

近所の寺の境内にある池に、桜の花びらが落ちて花筏になっていた。
女性は―――桜の花は散っても池にもう一度華やかな花を咲かせることが出来る―――人生で2度花を咲かせることが出来る。というメッセージを母に送りたかった。

夏

水面に映った木々、水中の世界と混じりあうことで重力から開放される世界を表現した。

秋

渦、生命の根源、静かな水面にいくつかの渦が現れ、「静と動」が同居し、一見静かな池に生命がみなぎっている。

冬

雪と氷で覆われた池の一部が温み、氷が溶けてそこに木々の合間から見える空が映り、わずかな希望のようなものを表現した。

これらの作品を描きあげ、母の遺影に捧げた。
これからも自分の生活の周辺の風景、人間の生命力・植物の生命力を描きたいと思っている。

美術科教授／洋画
山田修市